ずぶ濡れのあいらぶゆーー!!

不器用な僕なりに君に全てをあげる

それいゆ?2幕 〜上向いて、胸張って、前!〜

 

時代は戦後へ。服装は国民服から洋服に変わっていた。相も変わらず桜木は中原の良きパートナーとして働いていた。だがしかし、中原の中で新しい企画の話をする時に「今日は天沢くんが来るんだ!」と。その時の桜木の「天沢、天沢って....」と呟いているあたり桜木は天沢に嫉妬を感じ出している。またその反面、天沢はポピュラー歌手として成功していた。

そして天沢がやってきて語られた新しい企画。ミュージカルプレイ。凡人の桜木からしたら「無自覚無礼?」と聞き間違えてしまう程馴染みのない言葉だ。しかしそれに共感する天沢。桜木の意地と嫉妬心に火が付いたのだ。割と物分かりの良い桜木がここまで言い合いをするのはそのためだろう。

「ミュージカルというのは簡単に言えば音楽とお芝居を融合させたもの。」「要するにオペラみたいなものですか?」「違うよ!オペラは芝居と歌がメインだ。ミュージカルは芝居と歌に踊りが加わるんだよ!」「大して違わないじゃないですか。」「全然違うんだって!オペラはクラシック音楽だけど、ミュージカルはポピュラー音楽なんだ。」「大して違わないじゃないですか。詳しくない人間からすれば!」そして中原は言う。そのミュージカルの演出や衣装など全てを僕が出掛けるというのはどうかな?っと。桜木は反対だった。だが中原のことを尊敬し慕い、まだ大好きな桜木はこう告げる。ここにと天沢への嫉妬は忘れずに。「でも僕が反対したって先生やるんでしょ?僕は言うべきことは言ったのであとはお二人でどーぞ。」と。

 

このシーンでの中原と桜木の交わらなさをユーモアに書いているあたり素敵。中原が物凄く笑顔でキラキラとした顔で桜木に提案をし、それを受け入れてくれるかな?って思うとさらに笑顔になる。だが、首を振って「だ!い!反対です!」と言う桜木。可愛すぎかよ(笑)

 

  • ストリップ小屋

時代が変わり舞子は五味が経営するストリップ小屋で裸さらしておまんまを食べる生活をしていた。そんな変わり果てた舞子を見て中原は問いかける。「今の君には1日のほんの一瞬だけでも笑顔になれる時間はあるかい?」この言葉を舞子にかける瞬間の中原の顔が優しすぎて。

舞子の去ったストリップ小屋での五味と中原の会話。「客を取らせないだけマシだと思ってほしいね。」のセリフに五味の舞子への愛が詰まっている。

そして五味が中原に「あんたの周りにも金が欲しいやつがいるぞ」と言葉とともにタツミノクニという雑誌を見せる。さあ、中には何が書いてあったのだろうか。

 

ちなみにストリップ小屋の酔っ払いに辰巳雄大がいるのだが、いちいち可愛いのである(笑)ひたすら野次を飛ばし千穐楽には「まいちゃん見に来てんだよ!」とまで言い放った(笑)ストリッパーで遊ぶ酔っ払いの感じはただの辰巳雄大である。

 

  • 雨の中の舞子

雨の中の泣きじゃくる舞子に対して着物をかけてやり、不器用ながらに涙を拭ってやろうとする五味。少しずつ少しずつ五味の舞子への不器用な愛が晒されていく。だが、その愛は舞子には一切伝わらずぽろりと一粒涙を流し、五味の手を払いのける。

この辺りから五味が愛おしく見えてくるから不思議である(笑)

 

  • 桜木との決別

タツミノクニという雑誌に書かれていたのは桜木の書いた挿絵だった。ヒマワリ社の専属作家の桜木が何故他の雑誌に挿絵を描いたのか問いただしていると「ギャラが良くて」と答える桜木。だがしかし実は中原が怒っているのは桜木が他の雑誌に挿絵を描いたことでは無く、その挿絵の出来が良くなかったからだ。先方からの了承が出さえすれば、拘ってもいない挿絵を載せてしまう、そんな桜木を自分の全てをかけてこだわり抜いて絵を描いている中原は許せなかったのだ。そんな桜木を自分の会社には置いておきたくないと、解雇を言い渡す。

それにより今まで物分かりも割とよく中原を尊敬し、慕っていた桜木の感情の怒りが爆発する。


「ふざけるな。何が拘りだよ。先生は芸術家だ。だから拘りたかったらいくらでも拘ればいい。だけど、他人を巻き込まないでくれよ。大衆向けに物を作ろだなんて思わないねわくれよ!孤高を貫いて自分の作りたいものだけ作っていればいいだろう!!!!!」

このセリフに桜木の中原への全てが詰まっている。中原が自分の拘りを他人に押し付けた瞬間だったのだ。自分の拘りに他人を巻き込んだ瞬間なのだ。中原自身も桜木の愛を感じ取っていたはずなのに、それですら許せない中原の物に対して拘わり。天才ならではの拘り。桜木は天才じゃない。努力の人だ。凡人が努力して中原に認められる程のイラストレーターになったのだ。

そんな桜木が絞りきって放った言葉。

僕はあなたとは違う。

誰よりも中原を尊敬し、理解しようと歩み寄り、愛していたはずなのに、それでも桜木の放った言葉はこれなのだ。ずっと心のどこかで思っていたはずの言葉を放ってしまったのだ。そしてそれと共に一番大切に扱っていた中原淳一の下絵でさえも投げ捨ててしまう程、中原が桜木へ言い放った解雇の一言は桜木を怒りへと変えてしまったのだ。

それでもこのオフィスを離れる時の桜木の放った「ありがとうございました。中原先生。」にはたくさんの愛情と尊敬が詰まっていた。

 

  • 中原の葛藤

舞子を失い、桜木を失い、どんどん孤独になっていく中原。そして自分の部屋でこのような幻想?を見ることになる。

ーもしこの世の中に「信じる」ことがなかったら1日として安心して暮らせない。

桜木:信じて裏切られる苦しみを味わうくらいなら最初から信じないほうがずっといいさ。

ーもしこの世の中に「思いやり」がなかったら寂しくて生きてはいけないだろう。

桜木:思いやり?あなたは他人にもそしてそれ以上に自分にも厳しい人じゃないか。そして寂しさに包まれている。

ーもしこの世の中に「小鳥」が歌わなかったら、人は微笑むことを知らなかったかも知れない。

舞子:小鳥の声なんて聞こえない。だからわたしは微笑みなんか浮かべない。

ーもしこの世の中に「詩」がなかったら、人は美しい言葉を知らないまま死んでいく。

五味:美しい言葉なんて、聞けば聞くほど、語れば語るほど、現実との違いに苦しむだけじゃねーか。だったらそんなもの必要ねぇえ!!

ーもしこの世の中に「愛する心」がなかったら、人間は誰もが孤独です。

舞子:淳一先生?あなたは誰よりも愛する心に溢れている。なのに、どうして誰よりも孤独なの?

 

そしてこの語りがされている最中に下手で舞子が命と同じぐらい大事にしていた『少女の友』を五味に取り上げられるシーンが描かれている。後に大事になってくるシーンを語り途中に入れてくるのは逸材過ぎる。

 

  • 山崎編集長の想い

月日は流れ、中原淳一全プロデュースの元行われたミュージカルプレイが開幕した。その場に現れた、『少女の友』の元編集長山崎さん。ミュージカルプレイを見た終わった山崎は告げる「中原淳一の時代は終わった」と。だが、しかし本当はこのミュージカルを高く評価していたのだ。それを認めてしまうと自分の中にある中原への嫉妬心を認めてしまうことになる。彼は彼で戦っていたのだ。このご時世中原のように自分の信念を貫き通して生きていくことは無理に等しい。それをやってのけた中原淳一への嫉妬心。編集長は続けて告げる「だが中原淳一はあの時(もんぺ姿の少女を書け)といった時に妥協を覚えるべきだった」と。妥協を覚えず、自分の信念を貫く中原にとって今の時代は生きにくいのだ。

「並べられたたくさんの選択肢の中から無感動に選び取るそんな時代が訪れるんだよ。
その選択肢の中にあったもののほとんどは本物んかじゃない、本物っ”ぽい”ものだ。虚飾に溢れ自分じゃない誰かがいいねと言ったものだ。」

中原にはそんな時代を生き抜けないと。

 

  • 天沢と舞子の再会

ストリップ小屋以来に天沢は舞子と中原のお店ヒマワリの前ですれ違う。そして舞子は告げる。五味とは別れて1人で生きている、と。そして中原の状態を天沢から聞いた舞子は、淳一先生への伝言を天沢に託す。

 

  • 中原の葛藤

  仮面を付けた白装束に囲まれ中原は追い詰められる。”多数派に属さなければ、排除されてしまう、優しくて残酷な世界”こんな世界に生きている妥協の出来ない、多数派に属すことが出来ない、中原淳一に用はないと。時代から消えていってしまえ、と。

そして中原は自分の心の内を叫ぶ。

「手を伸ばせば簡単に手に入る服を着て、 他人が『いいね。』と言ったものをさも自分が欲しがっていたかのように買い漁り、味も知らない評判の店に並んで食事をして満足し、流行という言葉に飛びついて誰もが同じ音楽を聴く!そんな世界のどこが美しいんだ!!!」

そして中原は倒れ込んだ。

 

ここの台詞は本当に今の時代を表していて、心にグサグザきた。周りに流され続け生きていく今の時代の人たち。もちろん自分もそうだが、美しい生き方って何なんだろう?自己主張って何なんだろう?同調することだけが正しいのか?っと思った台詞だった。

 

  • 舞子との再会

倒れた中原の元にやってきた天沢。中原は天沢に問う。自分の生き方は間違っていたのか?と。すると天沢は迷うことなく、間違っていたと言う。間違っていた、あなたの生き方は矛盾していた、と伝え、その後にでも、あなたの生き方は誰よりも美しい、と肯定。そして舞子に出会ったことを伝える。舞子はヒマワリで自分で稼いだ稼ぎで中原の雑貨を買っていたのだ。何故なら五味に命と同じぐらい大事な『少女の友』を奪われ、捨てられ、生きる糧を失った舞子は、ヒマワリで自分の稼ぎで雑貨を買うことを生きる糧に変えていたのであった。次いで天沢は告げる。舞子からの中原への伝言も...

「もし完璧な造形美があるとすればそれはあなた」だと...

その言葉を聞いた中原は舞子をアトリエに連れて来いと天沢に伝え、舞子と再会するのだ。そして舞子へワンピースをプレゼントする。完璧な造形美に着せるための服をデザインしていたものの完璧な造形美が出来なければ服も着せれない、その時に舞子に似合うと思ったワンピースがあるからプレゼントしたい。のだと...。中原のデザインしたワンピースを着て舞台に立つのは舞子の夢だった。戦中も戦後も夢を追いかけ続けた舞子はやっとここにきて夢が叶ったのだった。そして中原と舞子は仲直り?をした。次にまた完璧に理に適ったいちごを食べる約束をして2人とさようならをするのである。

 

  • その後の人々

ー季節は冬。

桜木:元内の手がける違う雑誌の挿絵作家になっていた。そして元内は告げる「あなたは自分にも他人にも程よく甘い人間ですからね」っと。これは「自分にも他人にも厳しい中原」との対比を図った台詞なのだろうか?

五味:五味は相変わらず偽物に固執し売り続ける商売をしていた。そんな中天沢と出会い次は売れているポピュラー歌手天沢栄治の偽物を売り出していこうと告げる。そして天沢にこれを舞子に返してくれ。っとあるものを渡す。鞄を開けてみるとそこにあったのは舞子が捨てられたと思っていた『少女の友』だったのだ。ここから分かるように五味は不器用ながらに舞子を愛していた。愛していたのに愛をうまく告げれない人間だったのだ。

山崎編集長:街中でドライフラワーを売られ、買い、そこで中原を思い出していた。

 

  • 中原と完璧な造形美

さて、中原はどうしているかというと気合いを入れて完璧な造形美を作ろうとしていた。

ー上向いて、胸張って、前!

そしてそんな完璧な造形美を作っている中原をステージに残し舞子が中原について中原にもらったワンピースを着て語っている。また中原にもらったワンピースは上が白のノースリーブブラウスで下が赤のスカートというよく中原淳一の絵に出てくるデザインの物であった。舞子が語り終わると天沢が愛の賛美歌を歌う。そしてその後に中原は語りだす。

「あなたの中の美しさを思い浮かべて見て下さい。そしてそれを自分自身の姿として追い求めて見て下さい。僕もまだまだ拘り続ける。作り続ける。美しくいきるために。」

これを語っている中原はたくさんのヒマワリに囲まれている。中原の大好きなヒマワリに。自分を卑下して俯かず、太陽を見上げるヒマワリのように生きていくことが美しいと唱える中原とともにたくさんのヒマワリは上を向いていた・・・

 

 

 

 

はい!長ったらしいそれいゆの感想?終了!この公演を5公演見て思ったことは出演者それぞれが自分なりに美しいと思う生き方で生きていて、それぞれに時代ごとに悩みを感じていた。この舞台の中でなんどか言われた「モノに溢れた時代」それは今なのだ。誰かがいいねっと言ったものに流される時代なのだ。そんな時代に生きているからこそ美しく生きることをあらためて考えていきたいなあっと思った。

中原のように自分の意見を曲げず信念を貫くことだけが美しい生き方ではないが、確かに舞台に生きていた中原淳一は美しかった。

それがすべてなのではないか...。