ずぶ濡れのあいらぶゆーー!!

不器用な僕なりに君に全てをあげる

ぼくの名前はズッキーニ

 

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ママと二人で暮らしている少年・イカール。
ママは、イカールの事を“ズッキーニ”と呼び、いつしかテレビの前でビールを飲んでばかりになり、そしてズッキーニ(辰巳雄大)を怒鳴って叩くようになった。
ある日、ママは突然の事故で帰らぬ人になってしまう。

警察官のレイモンは、ズッキーニを養護施設「みんなのいえ」に連れて行った。クラスメイトは、リーダー格のシモン(稲葉友)をはじめ、アメッド、ジュジュブ、ベアトリスとちょっと変わった子供たち。戸惑うズッキーニだったが、厳しくもあたたかい養護施設のロージーパピノー園長に見守られながら、だんだんとクラスメイトたちと打ち解けていく。

そんな時、「みんなのいえ」にカミーユ川島海荷)がやってきた。
ズッキーニはカミーユから目が離せなくなってしまう。カミーユも、クラスメイトのみんなも、ズッキーニと同じように幼いながらにそれぞれ心の痛みを抱えていた。

みんなのいえ」では毎日のように何かが起きた。そう簡単にはいかない人生を、ズッキーニと子どもたちは一日一日重ねていくのだが———

 

https://www.ktv.jp/zucchini/

2021.2.28〜3.14 @よみうり大手町ホール

2021.3.19〜3.21 @COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

 

大好きな舞台にランクインした一作。観る人によって感じた方も感情移入する人も終わった後に感じることもそれぞれだと思う舞台だった。凄い苦しいところもありつつ温かさもありつつ、そんな舞台だった。なにより個人的に感じたのはこの物語に出てくる人は子供も大人も孤独で、その孤独に一緒に寄り添っていく舞台だと思った。そして愛で少しずつ空腹を満たしていくそんな物語。

 

 

まずズッキーニ。この物語の主となる人物なんだけど、タイトルにもなっている「ぼくの名前はズッキーニ」。ズッキーニの本当の名はイカールだけど、イカール母親はイカールのことを"のろま"の意味のズッキーニという愛称で呼んでいて、言わば悪口ではあるんだけど、ズッキーニにとっては母親が呼んでくれるその名前が大事で悪口なんかじゃなくて受け取れる唯一の愛で呼び方に固執していて、施設に行った時に先生方にイカールって呼ばれてる中「ぼくの!名前は!ズッキーニだ!!!!」って言っててそれがタイトルになっていると思うとこのタイトルすら深すぎて唸りたくなる。

 

日々ビール漬けのアルコール中毒のママに打たれてたズッキーニだけどその中で放たれる言葉が「ママは悪くない。悪いのはお空とビール。」だからこそ悪いお空さえ居なくなればってお空を殺そうとするの実に子供らしい考え方だなーって。そんな悪いビールなのにズッキーニは空き缶を大事にして施設にも持っていっててそんな歪な愛がとても苦ししかった。そしてママが死んでもズッキーニが施設に行ったとしてもママのことは唯一無二で大好きで、自分もひとりぼっちにさせられていたのに、ひとりぼっちになったママのことを気遣うなんてほんっとに。ある日お家に寄ることがあるんだがその時にママに「隣に来ていいよ」って言われた気がしてママの隣でやっとTVを見れるはずだったのにもちろんママが死んだのちの世界なのでママは居らず、そんなこととうの昔にズッキーニだってわかってるのに「ママが居ない」ってママを探し出すの本当に苦しくて泣いてしまった。「ママごめんね。ママは悪くないよ。ママー!ママどこ!ママー!」って泣きじゃくりながら何かに縋りたかりそうな声で泣いていてズッキーニには本当にママが一番なんだなって思った瞬間であったし、このシーンの辰巳雄大くんが本当に最高だった。

 

次にシモン。シモンは裏の主人公。私はシモンが個人的に大好きです。心の中はかまってちゃんで家族に誰よりも固執してて、でもそれを外に見せないように大人ぶって悪ぶってそんなシモンのことをハグしてあげたいとずっと思って見ていた。シモンの響くセリフが「構っても愛しても貰えない家族に何の意味があんだよ!家族なんてくそくらえ!!!」なんだけどこれって愛して構ってくれる家族が欲しくてたまらないしそれに固執してるから出てくるんだと思うんだ。他の子達とは違って自分の立場も弱さも全部知ってると私には見えるシモン。最終的に施設を出て行くズッキーニに放った「お前全部それ欲しいのか?今まで何もなかったじゃねぇか」もシモン自身に問いかけていると思ってて、シモンもズッキーニに出会って色んなものを手放したくなくなってるんだよね。だからこそのこの身長のお前が大好きだって言える関係性。シモンとズッキーニ最高だよ!!!!!!私が見た東京公演の前楽でシモンとズッキーニが正面切ってハグしてたのとてもよかったし、身長刻まれる時にズッキーニが両手でシモンに抱きつくの、好きでした。

 

さらに続いてカミーユ。ズッキーニが一目惚れする女の子。この子が多分一番大人のエゴで傷付けられている子供。それなのに大人の顔色見て反応伺って合わせて私って性格悪いのって言えるカミーユは大人だよ。強いよ。だからズッキーニに少しだけでも本音が言えてよかったなぁって思った。カミーユはズッキーニにきっと心底救われていると思う。「お掃除は任せてけろ〜」っていうカミーユ可愛くて好きでした。

 

 

ひとりぼっちのズッキーニズッキーニとカミーユのふたりぼっちになって、ズッキーニとカミーユとシモンの世界には3人しかいないってどんどん世界が広がっていって愛が広がって行くのがとてもよかったなぁ。舞台セットもとてもよくて始めは何もない黒板のセットなんだけど、そこに物語が進むにつれ落書きされたり文字が描かれたりしてその日その公演だけのセットになる。とても面白かった。床にもかけるようになっているから八百屋舞台になっていてそれもとてもよかったなぁ。

 

 

小説も映画もあるみたいだけど、どれも見れてないので見たいなぁって思っているので何れ摂取しようと思う。辰巳くんがターニングポイントになる作品とずっと言っていたが見終わった今その意味がわかるし本当に沢山の人に観て何かを感じて欲しい作品だなぁって思いました。